まあ昔のこと。土井勝氏がテレビによく出ていた。
顔はごついのだが、関西アクセントのやさしいしゃべり口で人気があった。
やさしいと言っても今風のオカマ喋りでは断じてない。料理人としてのバックボーンもしっかりしており、安心して見ていられた。
しかしながら、露出が多すぎたかもしれない。関西アクセントがモッチャリ感、或はアクの強さとして捉えられ厭きられつつあったようだ。母親も最初のころと違い、かなり嫌っていたようだ。
相変わらず私は料理番組が好きでよく見ていたのだが、ある公開収録番組での事だった。
素麺の作り方のようなものだったと思う。舞台上には、5、6人の一般人参加者がいた。氏がつゆを作り、『味はどうですか』と聞いた時の事、参加者の一人が「ちょっと甘いわ」と言いだした。あとの参加者も堰を切ったように「そうね、甘いわ」「そうそう」と言いだした。これにはちょっとびっくりした。確かにあの人の味付けは甘いと母親も言っていたような気がする。しかしそれは公開収録の場で言うような事だろうか。当然、打ち合わせなりがあったろうに。
後の事は覚えていない。ただ、氏が言葉をなくしてしまった様子を感じていただけである。
・・・
その後、私は氏をテレビで見ることはなかった。
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